【3474】 ○ 山本 直人 『聞いてはいけない―スルーしていい職場言葉』 (2023/08 新潮新書) ★★★★

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特に、上司やリーダーが使いがちな言葉が、身近な気づきを与えてくれる。

『聞いてはいけない』.jpg山本 直人.jpg 山本 直人 氏(写真:ノマドジャーナル)
聞いてはいけない:スルーしていい職場言葉 (新潮新書) 』['23年]

 かつて大手広告代店・博報堂でコピーライターと人事部門での仕事をし、現在は人材開発コンサルタントをしている著者(この著者の本は以前に『ネコ型社員の時代』('09年/新潮新書)を読んだが、あの頃にはもう博報堂を辞めていた)による本書は、日々の仕事や職場において、本当はスルーしてもいいような言葉に影響されたり、流行り言葉に振り回されたりしないためにはどうすればいいのかを説いています。

 第1章では、聞いてはいけない説教言葉として、「評判悪いよ」「絶対大丈夫か」などを挙げて、その根底にある悪意や問題点を探っています。「寄りそう」なども実は、その先どうするのかが曖昧な"危うい言葉"であり、「何とかしろ」は"怒るだけのリーダー"がよく使う言葉であると。「机上の空論」という言葉は、今までの延長線上でしかものを考えられない人がよく発するもので、新しいアイデアをつぶす"名ばかりのスペシャリスト"が使いがちだとしています。また、「夢を持て」という言葉が胡散臭さを感じさせる理由についても考察しています。

 第2章では、目新しい言葉ではあるが、本当に言葉の使い方として正しいのかどうか疑問であるとして、「老害」「劣化」といった言葉を取り上げ、検証しています。「配属ガチャ」「親ガチャ」といった使われ方をしている「ガチャ」は、いわば"不幸を呼ぶ言葉"であり、「失われた世代」という言葉も"自分事"を"他人事"にしてしまう安易な使われ方をしていると。「さん付け」で果たして社内の風通しが良くなるのか、新しい強制力が生まれるのではないかと疑念を呈しています。

 第3章では、「迷惑をかけるな」「許せない」といった言葉の呪縛から解放されることを説いています。「やればできる」というのは、いわゆる"昭和の職場"であれば通用していたが、今の職場では通用せず、これからは「できることをやる」職場になっていくだろうしています。「あれが好きな人はダメ」という人こそダメであり、「誰だってできるようなことしかやらせてもらえなう」とよく言うけれども、「誰にでもできる仕事」と思ったら、そこで負けなのだとしています。

 仕事を進めていく上で、誰かの発する「困った言葉」が組織全体を停滞させてしまったり、メンバーの士気を低下させてしまったりすることもあり、なんとなくモヤモヤしている時は、そうした言葉にどこか引っ掛かっている場合があって、その引っ掛かりの理由を明らかにし、言葉を変えていくだけで職場の空気も変わるはずだとしています。

 仕事をしていく中で接する、身近な人々が発する言葉や、組織のリーダーが使う言葉だけでなく、メディアを通じて広まる言葉なども取り上げていますが、特に、上司やリーダーが使いがちと思われる言葉が、身近な気づきを与えてくれるように思いました。

 タイトル的には"部下としての防衛策"的なタイトルですが、"上司・リーダーのためのセルチェック"本としても読めます。さらっと読める一般ビジネス書ですが、"自分事"として読むことで、"上司学"の本としても読めるのではないでしょうか。

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